田中・下元法律事務所BLOG
2011年11月10日 木曜日
契約書について (私の頭の中の利己的なおっさんの話)
田中弁護士が半生を振り返っている間に、私、下元高文が、契約書の話をします。
10年以上前、私が修習生だったとき、就職活動(事務所訪問)でお聞きした会話です。
ベテラン弁護士「君は、弁護士になって何がしたいんや?」
修習生「企業法務です!」
ベテラン弁護士「企業法務て何や?」
修習生「いや、その、契約書作ったりとか・・・。」
ベテラン弁護士「君は契約書が作りたいんか?」
修習生「いや、その・・・」
同様の話は何度か聞いたことがあるので、実際の会話というよりも、プチ都市伝説のようなものかもしれません。
その仕事の「内容」ではなく、「企業法務を取り扱っている弁護士は、羽振りがよさそう。」という「イメージ」だけで希望している修習生を揶揄して語られた話ではないかと思います。
この会話には、弁護士の仕事として「契約書」の作成業務が出てきます。
ベテラン弁護士が「君は契約書が作りたいんか?」と聞いて、修習生が口ごもったのは、
「おもしろくなさそう」
「地味」
「儲からなさそう」
というイメージがあったからです。
このように断言できるのは、修習生時代、私もそう思っていたからです。
たしかに、契約書の作成やチェックは、交渉や訴訟などでガンガンやり合うことに比べると、華々しさに欠け、地道な作業の積み重ねです。
しかし、契約書がきちんと作成されていることで事前にトラブルを防止できたり、万が一、トラブルになった場合にも「証拠」として威力を発揮することを考えると、非常に重要な業務です。
また、これまでなかったような、新たな取引の契約書ですと、一から作成していくという創造的な作業も必要となっており、実はとてもおもしろい仕事だと思います。
私が契約書作成の際、心がけているのは次の点です。
1 取引、人、モノ、お金の流れを正確に
複雑な取引ですと、登場人物もたくさん出てきますし、誰が何をしなければならないのか、ということもこんがらがってきます。
簡単な図を作成して、それぞれの登場人物が時系列に沿って何をするのか、チャートのようなものも作っていきます。
お金の流れも重要で、支払額の基準や、締め日、支払日、支払い方法など、漏れがないか確認していきます。
実際の取引の流れが契約書にも明確に書かれていることが大事ですが、そこら辺に転がっている契約書のひな型等を利用したり、別の契約書を流用したりして、実態と異なる契約書になっている例はたくさんあります。
2 登場人物がそれぞれ勝手なことを言い始めることを想定
取引の流れが正確に記載されたら、次は、それぞれの登場人物が勝手に自分に都合のいいことを言い始めることを想像します。
実際には、当事者は会社であることの方が多いですが、私の場合、想像するのは個人です。
もう少し詳しく書くと、「決められたことはやるが、決められていないことはせず、書かれていないことや解釈の幅があることについては自分に都合よく考える、利己的なタイプのおっさん」を想像します。(おっさんなのは、その方が親近感が沸くからであり、他意はありません。)
このおっさんたちはそれぞれ勝手に動くのですが、私が契約書の文言を入れることによって、動ける範囲が狭まっていき、取引の目的が達成できるようにするというイメージです。
ここで、どれだけおっさんに感情移入し勝手な行動をイメージできるかがポイントですが、人間の考えることはそれほど複雑ではないので、過去の事例を参考に考えることができます。
契約書作成ほど、弁護士の経験が生かせる仕事もないのではないかと思います。
3 何ごとも終わりが肝心
取引の流れの中でもっとも注意するのは、「契約の終わり方」です。
実際のトラブルも契約終了を巡るものが非常に多いです。
契約終了に関する規定が明確に記載されていなかったり、想定外の終わり方をする場合、私の想像したおっさん方は、「どうせ最後や!」「もう関係ないから、遠慮せんと、トコトンやったれ!」と言い出すことが多いのです。
売買など、物とお金のやりとりが終われば契約も終わりという場合もありますが、一定期間契約が続く場合には、その間に様々なことが起こります。
期間満了だけでなく、解除事由など、気を遣ってチェックします。
4 言葉は大事
言葉は大事です。
一義的で明確な言葉でなければ、勝手な解釈が可能になっていきます。
革新的で創造的な詩のような契約書を作ってしまうと、読む者に感動すら与える可能性はありますが、契約書としては最悪です。
契約書用語として確立しているものは比較的解釈の幅が狭いと言えますので、それを使うことができればベストですが、新しい用語は、意味が明確になるよう工夫しながら書いていきます。
知的財産関係の契約書などは、冒頭にたくさんの定義が並べてあり、それだけで読む気をなくすこともありますが、定義づけも重要です。
また、厳格なイメージを与える言葉は、「守らないと何となく怖い。」という印象を植え付け、心理的に履行を強制する効果もあります。
契約書がトラブルの予防を大きな目的としている以上、その効果も重要です。
ただし、厳格なイメージを重視するあまり、普通の人では意味が分からないような古い言葉を多用した契約書は、当然のことながら、良くない契約書です。
5 依頼者の利益とバランス感覚
依頼者の利益を追及することは,弁護士としてとても重要なことです。
契約書作成のご依頼は、当事者の一方から受けますので、そちらに不利にならないように、有利になるように作成していきます。
先ほどのおっさんの話も、実は、依頼者には都合のいい部分も残しながら、相手方からの無茶な言い分を潰していくというという作業に重点を置いています。
しかし、一方当事者にあまりに偏った契約書というのも、バランスを欠いているような気がします。
これは、ケースバイケースですし、弁護士としての仕事に対する考え方にもよるのですが、私としては、やはりバランス感覚が必要なのではないかと思っています。
例えば、相手方の法律的知識のなさにつけ込んで、一方的に有利な条項を入れた契約書を作って、不意打ち的に損害を与える(利益を得る)ようなことは、やはり良くないのではないかと思います。
というようなことを考えながら、私は、夜な夜な契約書作成業務を楽しんでおります。
夜中、頭の中でおっさんをイメージして動かしているというのも、よく考えたら不気味な気もしますが。
終わり
大阪で中小企業にまつわる法律問題について弁護士に相談なさる際は田中・下元法律事務所へ
10年以上前、私が修習生だったとき、就職活動(事務所訪問)でお聞きした会話です。
ベテラン弁護士「君は、弁護士になって何がしたいんや?」
修習生「企業法務です!」
ベテラン弁護士「企業法務て何や?」
修習生「いや、その、契約書作ったりとか・・・。」
ベテラン弁護士「君は契約書が作りたいんか?」
修習生「いや、その・・・」
同様の話は何度か聞いたことがあるので、実際の会話というよりも、プチ都市伝説のようなものかもしれません。
その仕事の「内容」ではなく、「企業法務を取り扱っている弁護士は、羽振りがよさそう。」という「イメージ」だけで希望している修習生を揶揄して語られた話ではないかと思います。
この会話には、弁護士の仕事として「契約書」の作成業務が出てきます。
ベテラン弁護士が「君は契約書が作りたいんか?」と聞いて、修習生が口ごもったのは、
「おもしろくなさそう」
「地味」
「儲からなさそう」
というイメージがあったからです。
このように断言できるのは、修習生時代、私もそう思っていたからです。
たしかに、契約書の作成やチェックは、交渉や訴訟などでガンガンやり合うことに比べると、華々しさに欠け、地道な作業の積み重ねです。
しかし、契約書がきちんと作成されていることで事前にトラブルを防止できたり、万が一、トラブルになった場合にも「証拠」として威力を発揮することを考えると、非常に重要な業務です。
また、これまでなかったような、新たな取引の契約書ですと、一から作成していくという創造的な作業も必要となっており、実はとてもおもしろい仕事だと思います。
私が契約書作成の際、心がけているのは次の点です。
1 取引、人、モノ、お金の流れを正確に
複雑な取引ですと、登場人物もたくさん出てきますし、誰が何をしなければならないのか、ということもこんがらがってきます。
簡単な図を作成して、それぞれの登場人物が時系列に沿って何をするのか、チャートのようなものも作っていきます。
お金の流れも重要で、支払額の基準や、締め日、支払日、支払い方法など、漏れがないか確認していきます。
実際の取引の流れが契約書にも明確に書かれていることが大事ですが、そこら辺に転がっている契約書のひな型等を利用したり、別の契約書を流用したりして、実態と異なる契約書になっている例はたくさんあります。
2 登場人物がそれぞれ勝手なことを言い始めることを想定
取引の流れが正確に記載されたら、次は、それぞれの登場人物が勝手に自分に都合のいいことを言い始めることを想像します。
実際には、当事者は会社であることの方が多いですが、私の場合、想像するのは個人です。
もう少し詳しく書くと、「決められたことはやるが、決められていないことはせず、書かれていないことや解釈の幅があることについては自分に都合よく考える、利己的なタイプのおっさん」を想像します。(おっさんなのは、その方が親近感が沸くからであり、他意はありません。)
このおっさんたちはそれぞれ勝手に動くのですが、私が契約書の文言を入れることによって、動ける範囲が狭まっていき、取引の目的が達成できるようにするというイメージです。
ここで、どれだけおっさんに感情移入し勝手な行動をイメージできるかがポイントですが、人間の考えることはそれほど複雑ではないので、過去の事例を参考に考えることができます。
契約書作成ほど、弁護士の経験が生かせる仕事もないのではないかと思います。
3 何ごとも終わりが肝心
取引の流れの中でもっとも注意するのは、「契約の終わり方」です。
実際のトラブルも契約終了を巡るものが非常に多いです。
契約終了に関する規定が明確に記載されていなかったり、想定外の終わり方をする場合、私の想像したおっさん方は、「どうせ最後や!」「もう関係ないから、遠慮せんと、トコトンやったれ!」と言い出すことが多いのです。
売買など、物とお金のやりとりが終われば契約も終わりという場合もありますが、一定期間契約が続く場合には、その間に様々なことが起こります。
期間満了だけでなく、解除事由など、気を遣ってチェックします。
4 言葉は大事
言葉は大事です。
一義的で明確な言葉でなければ、勝手な解釈が可能になっていきます。
革新的で創造的な詩のような契約書を作ってしまうと、読む者に感動すら与える可能性はありますが、契約書としては最悪です。
契約書用語として確立しているものは比較的解釈の幅が狭いと言えますので、それを使うことができればベストですが、新しい用語は、意味が明確になるよう工夫しながら書いていきます。
知的財産関係の契約書などは、冒頭にたくさんの定義が並べてあり、それだけで読む気をなくすこともありますが、定義づけも重要です。
また、厳格なイメージを与える言葉は、「守らないと何となく怖い。」という印象を植え付け、心理的に履行を強制する効果もあります。
契約書がトラブルの予防を大きな目的としている以上、その効果も重要です。
ただし、厳格なイメージを重視するあまり、普通の人では意味が分からないような古い言葉を多用した契約書は、当然のことながら、良くない契約書です。
5 依頼者の利益とバランス感覚
依頼者の利益を追及することは,弁護士としてとても重要なことです。
契約書作成のご依頼は、当事者の一方から受けますので、そちらに不利にならないように、有利になるように作成していきます。
先ほどのおっさんの話も、実は、依頼者には都合のいい部分も残しながら、相手方からの無茶な言い分を潰していくというという作業に重点を置いています。
しかし、一方当事者にあまりに偏った契約書というのも、バランスを欠いているような気がします。
これは、ケースバイケースですし、弁護士としての仕事に対する考え方にもよるのですが、私としては、やはりバランス感覚が必要なのではないかと思っています。
例えば、相手方の法律的知識のなさにつけ込んで、一方的に有利な条項を入れた契約書を作って、不意打ち的に損害を与える(利益を得る)ようなことは、やはり良くないのではないかと思います。
というようなことを考えながら、私は、夜な夜な契約書作成業務を楽しんでおります。
夜中、頭の中でおっさんをイメージして動かしているというのも、よく考えたら不気味な気もしますが。
終わり
大阪で中小企業にまつわる法律問題について弁護士に相談なさる際は田中・下元法律事務所へ
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